1. 修繕積立一時金とは
修繕積立一時金について詳しく知るために、まずは基礎的な知識について見ていきましょう。似た言葉の修繕積立基金についても紹介します。
修繕積立金の不足分を補うお金
マンションを購入すると、毎月決まった金額の『修繕積立金』を支払います。共用部の修繕に向けて積み立てられている資金です。この資金とは別に請求されるのが『修繕積立一時金』です。
大規模修繕のタイミングで修繕積立金の不足分を補うために徴収されます。マンションによって負担する回数や時期・金額はさまざまです。
管理組合の財政状況によって、数万円程度の負担で収まる場合もあれば、1,000,000円以上もの高額な負担を請求されるケースもあります。
購入時に支払うなら修繕積立基金
一時金と似た費用に『修繕積立基金』があります。一時金が大規模修繕のタイミングで請求されるのに対し、修繕積立基金は新築マンション購入時に支払う費用です。
新築マンションでは、修繕費用がまだ十分に積み立てられていません。その状態で修繕の必要が出ると、資金不足で必要な工事ができない可能性もあります。そこで修繕積立基金を設定し、資金を用意するのです。
また購入時に必須の諸費用に含めて請求することで、毎月の修繕積立金の金額を抑えたり、大規模修繕の補填に使用したりします。
2. 修繕積立金や一時金には問題点も
快適な状態でマンションに住み続けるには、定期的な修繕が必要です。そのためには修繕積立金や一時金がかかります。しかしこれらの費用には問題点も潜んでいることを把握しましょう。
支払いを滞納する家庭が多い
国土交通省が行った2018年の調査によると、毎月支払う修繕積立金を滞納している家庭は24.6%という結果です。全体に減少傾向ではありますが、滞納している家庭は存在します。
特に完成年次が古いマンションは滞納している割合が高い傾向です。月数万円の修繕積立金を支払えない家庭では、大規模修繕のタイミングで一時金を請求しても支払えないケースがほとんどでしょう。
その結果、不足分を管理組合が借り入れなければならないこともあります。修繕積立金に金融機関への返済分が加わり、大幅な増額になるケースもあるのです。
参考:平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状 P.18|国土交通省
急な徴収や値上げのケースがある
マンション購入時点では、修繕積立金が安い方が魅力的に見えるでしょう。しかし修繕積立金が安い場合、将来的に増額される可能性がある点には注意しましょう。修繕積立金が低過ぎると、必要な費用を十分積み立てられません。
加えて近年では工事にかかる費用が上昇しています。その結果、将来的に修繕費用が不足すると判断され、月々の修繕積立金を値上げされる可能性があるのです。
また築年数が長いほど、建物は劣化し大幅な修繕を必要とします。そのため必要な積立金は増加していくでしょう。どのような計画により修繕積立金の値上げや一時金の徴収が行われるかは、管理組合ごとに異なります。
中には当初15,000円だった修繕積立金が、8年間で60,000円に値上がりしたケースもあるため注意が必要です。
払わない人がいると工事が進まない
一戸あたり数十万円もの大金を請求されることもある修繕積立一時金は、徴収に対する合意を得にくい特徴があります。また合意形成ができたとしても、全家庭が確実に支払えるとは限りません。
未納の家庭が多ければ資金が集まらず、工事ができない可能性もあるでしょう。経年劣化により悪化した住環境が改善されず、住民の満足度が低下していく悪循環に陥ることも予想されます。
3. 一時金の請求が来ても慌てないために
たとえ必要な費用だとしても、突然数十万円といった大金を請求されると驚いてしまうものです。あらかじめ長期修繕計画をチェックしたり、もしものときの対策を検討したりしておくと、慌てずに済みます。
長期の修繕計画を確認する
一時金が徴収される時期は『長期修繕計画』を確認すると分かります。修繕予定とともに、今後の積立金負担についてもまとめられているからです。
新築からしばらくは修繕積立金が低めに設定されており、その不足分を補うために5年目・10年目・15年目といった節目に、一時金を徴収する計画になっているケースが多いでしょう。
今後の値上げや請求の予定をチェックし、家庭の資金計画で無理なく支払えるか検討することが大切です。長期修繕計画の閲覧は管理組合へ請求しましょう。
資金がない場合は住み替えも検討
長期修繕計画を閲覧し家庭の資金計画と照らし合わせた結果、修繕積立金の増額や一時金の徴収があると、そのマンションに住み続けるのが難しいケースもあるでしょう。そのような場合には住み替えも検討します。
マンションを売却した資金で家計に見合う住宅に住み替えれば、修繕積立金や一時金の負担が軽減されるでしょう。
4. 住居の長期計画を確認して準備しよう
修繕積立一時金は、マンションの大規模修繕のタイミングで徴収される可能性のある費用です。具体的な金額は管理組合の財政状況によりさまざまですが、徴収されるときには数十万円単位のケースが多いでしょう。
ただし毎月の修繕積立金を滞納する世帯もあるため、マンションの全世帯から一時金を集められるとは限りません。それでも修繕が必要となると、管理組合が借り入れして工事を行う場合もあるのです。
その結果、ますます積立金や一時金の負担が増えます。長期修繕計画を閲覧し、将来的に資金繰りが苦しくなりそうだと感じたら、住み替えも視野に入れ検討するとよいでしょう。