1.4,000万円の住宅ローンを組める年収は?
希望する物件の価格が4,000万円の場合、ローンを組める年収の目安はどのくらいなのかを解説します。返済比率の重要性も理解しましょう。
目安は年収500万円以上
住宅金融支援機構が公表している『2019年度 フラット35利用者調査』では、購入物件価格の年収倍率の全国平均が分かります。
新築物件の場合、注文・建売住宅が6~7倍、マンションと土地付注文住宅は7~8倍です。年収倍率は年々上昇しており、いずれの融資区分も10年前と比べ1倍ほど上がっています。
このデータから、現在の新築住宅は、年収の6~8倍程度の融資を受ければ購入可能と判断できるでしょう。4,000万円の住宅ローンを組みたい場合、年収倍率を8倍とするなら、年収の目安は500万円以上です。
参考:2019年度 フラット35利用者調査 P.13|住宅金融支援機構
返済比率は20%以下に抑えるのが安全
住宅ローンの借入可能額を決める際は、返済比率を考慮する必要があります。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合です。
返済比率を高めれば、より多くの金額を返済できることになり、借入可能額を増やせる可能性が高まります。一方、返済比率が高いと返済負担も増加するため、家計が苦しくなる恐れがあるでしょう。
無理なく返済できる理想の返済比率は、20%以下といわれています。『いくらまで借りられるか』だけでなく、『いくらまでなら返せるか』を考えることも重要です。
年収800万円で返済比率を20%に設定した場合、年間返済額は800万円×20%=160万円です。月々の返済額に直せば、160万円÷12カ月=約13万円となります。返済比率を決める際の参考にしましょう。
2.物件購入時の諸経費に注意
住宅ローンを利用する際は、月々の返済額だけでなく、購入時の諸経費を意識することも大事です。諸経費の相場や計算方法について解説します。
新築戸建て・マンションの場合
新築住宅の購入時にはさまざまな諸経費がかかります。主な費用は、登録免許税・印紙税・仲介手数料・火災保険料です。
ローン契約時にも事務手数料や保証料が発生します。抵当権設定登記を司法書士に頼む場合は、報酬を支払わなければなりません。
諸経費の相場は、新築戸建てが物件価格の5~10%、新築マンションの場合は3~6%が目安です。4,000万円の物件を購入するなら、新築戸建てで200万~400万円程度、新築マンションで120万~240万円程度かかることになります。
不動産会社を介して販売される新築戸建てと異なり、新築マンションは基本的に直販で提供されるため、仲介手数料の分だけ諸経費の相場が低くなっています。
中古戸建て・マンションの場合
中古物件を購入する場合も、新築と同様の諸経費が発生します。中古物件は基本的に不動産会社を通して販売されるため、戸建て・マンションのどちらも仲介手数料が必要です。
諸経費の相場は、戸建て・マンションともに5~10%が目安となります。物件価格が4,000万円の場合、諸経費は200万~400万円程度必要になるでしょう。
新築と中古を比較する場合、新築マンションのみ仲介手数料の差で諸経費は安くなります。ただし、不動産会社が所有している物件なら、仲介手数料はかかりません。
諸経費をシミュレーション
住宅ローンを組んで4,000万円の物件を購入する場合、諸経費の内訳と概算金額は以下のようになります。
新築戸建て |
中古戸建て |
新築マンション |
中古マンション |
|
印紙税 |
3万円 |
3万円 |
3万円 |
3万円 |
登録免許税 |
36万円 |
42万円 |
26万円 |
33万円 |
ローン諸経費 |
75万円 |
75万円 |
75万円 |
75万円 |
仲介手数料 |
130万円 |
130万円 |
0円 |
13万円 |
火災・地震保険料 |
15万円 |
15万円 |
15万円 |
15万円 |
司法書士報酬 |
12万円 |
12万円 |
12万円 |
12万円 |
修繕積立基金 |
0円 |
0円 |
30万円 |
0円 |
合計 |
271万円 |
277万円 |
161万円 |
268万円 |
新築戸建てと中古戸建て・マンションは、諸経費の金額がほぼ同じです。新築マンションは修繕積立基金がかかるものの、仲介手数料が発生しないため、ほかと比べて安くなる傾向があります。
3.借入可能額が4,000万円以下の場合の対処法
融資額が希望額に届かないなら、以下に挙げる対処法を検討してみましょう。どちらの方法も、借入可能額が4,000万円に達する可能性があります。
頭金を増やす
借入可能額が4,000万円に届かない場合、頭金を増やせば借入可能額を増額してもらえる可能性があります。融資額が減ることで返済額も減り、返済比率を下げられるためです。
代表的な固定金利型ローンであるフラット35では、物件購入価格の1割を超える頭金を用意すれば、低金利で借入できます。金利が下がると返済負担が減るため、借入可能額が増えるケースもあります。
ただし、頭金を増やす場合は、自己資金の残額に注意が必要です。希望額で借入できても、自己資金に余裕がなくなれば、急な出費が必要となった際に困りかねません。
ペアローンや収入合算を検討
配偶者にまとまった収入があるなら、『ペアローン』や『収入合算』を検討するのも一つの方法です。申し込み時に申請する年収を増やせるため、希望額に達する可能性が高まります。
ペアローンとは、一つの物件に対し、夫婦それぞれが個別にローンを組む借入方法です。独立した契約が2本になるため、どちらも住宅ローン控除や団信を利用できます。
夫婦の片方が連帯保証人や連帯債務者となり、2人の収入を合計してローンを組む方法が収入合算です。契約が1本しかないため、諸経費も1本分で済みます。
4.返済額を減らす方法
希望する4,000万円で借入できたとしても、月々の返済額が多ければ、ローン利用中の生活に不安を感じるでしょう。できるだけ返済額を減らす方法を紹介します。
低金利でローンを組む
月々の返済額を減らしたいなら、より低い金利でローンを組むのが基本です。金利が1%違うだけで、月々の返済額に1万円以上の差が出ることがあります。総返済額の差は数百万円に及ぶ場合もあるでしょう。
1%を下回る長期ローンを組んだ上で、住宅ローン控除を利用すれば、控除額が利息を上回る『マイナス金利』を狙うことも可能です。
マイナス金利にするためには、限度額いっぱいに控除を受けられるように計画を立てる必要があるでしょう。控除による還付金額が支払い済みの利息額を上回れば、実質的には無利子でローンを利用できていることになります。
繰り上げ返済を行う
返済負担を軽減できる方法としては、繰り上げ返済を行うのもおすすめです。繰り上げ返済とは、ローン残高の一部または全部を、毎月の支払いとは別に返済することをいいます。
繰り上げ返済の種類には『期間短縮型』と『返済額軽減型』があり、月々の返済負担を軽減できるのは返済額軽減型のほうです。返済期間を変更せずに、月々の返済額を減らせます。
期間短縮型は、返済期間を短縮してローン支払いを早く終わらせたい場合に有効なタイプです。月々の返済額に変更はありません。
住宅ローン控除を活用
所得税や住民税から控除できる『住宅ローン控除』を利用すれば、控除分が後から還付されるため、結果的に住宅ローンの返済負担を軽減できます。
住宅ローンの適用期限は最大10年間です。その年の年末残高に応じた金額が税金から控除されます。所得控除と異なり、税金から直接控除できる税額控除の一つであるため、活用すれば大きな節税効果を期待できるでしょう。
年収・返済期間・床面積など、制度を利用するためには一定の条件を満たす必要があります。特定の条件をクリアすれば、最大控除額を増やしたり、最大適用年数を延ばしたりすることも可能です。
5.返すことを考えて資金計画を立てよう
年収が500万円以上なら、住宅ローンで4,000万円を借入できる可能性があります。希望額に届かない場合は、頭金を増やしたり夫婦の収入を合算したりする方法が有効です。
ただし、ローンを利用する際は諸経費が発生することに注意が必要です。融資額が多くなるほど返済負担も重くなるため、返すことも考慮して計画を立てましょう。