1.マンションにまつわる税金額算定の基準
マンションの税金に大きく影響するのが固定資産税評価額です。税金の種類や特徴を知る前に、まずは固定資産税評価額について理解を深めておきましょう。
固定資産税評価額を元に算出
マンションの購入時には不動産取得税や登録免許税が課されます。また、マンションを所有している間は、固定資産税や都市計画税を支払わなければなりません。
これらの税額を計算する際は、『固定資産税評価額』が使われます。固定資産税評価額とは、土地や建物の価値がどのくらいあるのかを示す金額のことです。
固定資産税評価額は、各自治体が不動産を一つずつ確認した上で決定されます。土地の場合は地価の約70%、新築の建物なら請負工事価格の約50%が一つの目安です。
2.マンション購入時にかかる税金
マンションを購入する際には、不動産取得税・登録免許税・印紙税・消費税が課税されます。それぞれの具体的な内容を確認しましょう。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物など不動産を取得した際にかかる地方税です。入居開始後しばらくして送付されてくる納税通知書に基づき、都道府県に納税します。
不動産取得税の計算式は『固定資産税評価額×税率』です。税率は原則として4%ですが、令和6年3月31日までに取得した分は軽減措置が適用され、以下の計算式となります。
- 宅地:固定資産税評価額×1/2×3%
- 住宅:固定資産税評価額×3%
不動産取得税は、登記の有無や有償・無償に関係なく課税されます。ただし、不動産を相続で取得したケースなど、一定の条件にあてはまる場合は課税されません。
登録免許税
マンションを購入する際は、所有権の登記を行わなければなりません。また、住宅ローンを組んで購入する場合は、金融機関がマンションに抵当権設定登記を行います。
これらの登記手続きにかかる税金が登録免許税です。国から課税される税金であり、法務局での登記手続きの際に納税します。
登録免許税の計算式は、登記の種類により異なります。本則の税率を使用した計算式は以下のとおりです。
- 土地の所有権移転登記:固定資産税評価額×2.0%
- 新築建物の所有権保存登記:固定資産税評価額×0.4%
- 中古建物の所有権移転登記:固定資産税評価額×2.0%
- 抵当権設定登記:借入額×0.4%
それぞれ期限付きで軽減措置があるので、国税庁のウェブサイトなどで確認しておきましょう。
印紙税
契約書や領収書など特定の文書には、印紙税法により印紙税が課されます。印紙税が課税される文書のことを課税文書といいます。
一定の条件を満たした文書は課税文書として扱われ、課税文書が作成される際は印紙税を納税しなければなりません。
マンション購入時には、課税文書に該当する不動産売買契約書・建設工事請負契約書・金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約書)が作成されます。契約書に記載された金額に基づいて決定した税額分の印紙を、契約書に貼り付ける形で納付します。
消費税
注文住宅や建売住宅を不動産会社から購入する場合は、物件価格の10%分の消費税が課されます。不動産会社が課税事業者に該当するためです。
一方、中古物件など売り主が個人のケースでは、消費税は課税されません。ただし、不動産会社が販売する中古物件は、消費税の課税対象となります。
住宅のタイプにかかわらず、土地には消費税がかかりません。土地付き住宅を購入する場合、土地分の価格を除いた部分にのみ消費税が課税されます。
3.マンション所有によりかかる税金
マンション購入時だけでなく、マンションを所有している間にかかる税金もあります。二つの税金について詳しく解説します。
固定資産税
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産に毎年かかる地方税です。マンションを購入すると、土地と建物を所有することになるため、両方に固定資産税が課税されます。
固定資産税の計算式は『固定資産税評価額×標準税率1.4%』です。標準税率は市区町村により異なる場合があります。
固定資産税は、築年数や居住面積などの条件を満たせば減額・減免の措置を受けられます。税額がいくらになるのかは、送付されてくる納税通知書で確認することが可能です。
一般的に、固定資産税は年4回に分けて納付します。固定資産税評価額は3年ごとに見直されるため、税額に変更がないか通知書で毎年確認しましょう。
都市計画税
マンションを所有する地域によっては、固定資産税と併せて都市計画税がかかる場合もあります。都市計画税とは、街づくりにおけるインフラ整備を目的として徴収される税金です。
所有マンションが『市街化区域』に建てられている場合、土地と建物に都市計画税が課税されます。税額の標準的な計算式は『固定資産税評価額×税率0.3%(最大)』です。
都市計画税は、築年数や居住面積などに応じて、土地分の税額に対してのみ軽減措置を受けられます。都市計画税の納付義務がある場合は、固定資産税と併せて課税されます。正確な税額は、納税通知書で確認が可能です。
4.マンション売却時にかかる税金
マンションを売却して利益が発生した場合、利益に対して税金がかかります。確定申告をスムーズに行うためにも、それぞれの税金について理解を深めておきましょう。
譲渡益が生じた際に発生
マンション売却時に利益が生じた場合、利益に対して所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。譲渡の際に発生した利益を『譲渡所得』といいます。
不動産の売却で得た譲渡所得は、他の所得と合算せず単独で課税される『分離課税』の対象所得です。所得同士を合算できる『総合課税』の対象所得と区別されます。
不動産所得や事業所得など総合課税に分類される所得は、赤字が発生しても総合課税に分類される他の所得と相殺できます。しかし、譲渡所得は他の所得と合算できないため、赤字が発生した場合は課税されません。
所得税
譲渡所得にかかる税金の一つが所得税です。譲渡所得に税率15%または30%を掛けて算出されます。国に納める税金であり、確定申告を行うことで税額が確定します。
譲渡所得の計算式は、『譲渡収入金額-譲渡費用-マンション取得費用』です。譲渡所得にかかる税金は、譲渡が行われたときのみ課税されます。
譲渡収入金額の主な内訳は、マンションの売却価格と、固定資産税・都市計画税の精算金です。譲渡費用には、仲介手数料や売り主が負担した印紙税などが該当します。
マンション取得費用は、マンションの購入代金・取得時の仲介手数料・登録免許税・印紙税・設備費などを合計した金額から、減価償却累計費を差し引いた金額です。
参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
住民税
マンション売却時に課される住民税は、市区町村や都道府県に納める地方税です。譲渡所得に税率5%または9%を掛けて税額を計算します。
所得税の確定申告を行えば、住民税の申告を個別に行う必要はありません。一般的には、マンションを売却した年の翌年6月以降に納付することになります。
住民税の支払いは、確定申告後に送付されてくる納付書で行うことが可能です。確定申告の際に、特別徴収での納付を希望しておけば、住民税が給料から天引きされます。
復興特別所得税
復興特別所得税とは、東日本大震災の復興のために、期間限定で徴収されている税金です。所得税が課税される人を対象に、平成25年から令和19年まで徴収されます。
復興特別所得税の計算式は、『その年の所得税額×2.1%』です。所得税と同じ扱いであり、確定申告を行うことで税額が確定します。
確定申告書を作成する際は、復興特別所得税の記入漏れがないように気を付けましょう。申告期限と納付期限は、原則として所得税と同じ3月15日です。
所有期間による税率の違いに注意
マンション売却時にかかる所得税と住民税は、売却までの所有期間により税率が異なります。税額の計算をする際は注意しましょう。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は、譲渡所得の種類が『短期譲渡所得』となります。短期譲渡所得における税率は、所得税が30.63%、住民税が9%です。
売却年の1月1日で所有期間が5年超に達しているなら『長期譲渡所得』と扱われ、所得税は税率を15.315%、住民税は税率を5%として計算します。
復興特別所得税は所得税額に2.1%を掛けて計算するため、所得税額に応じて税額が変わります。
5.マンション購入時に利用できる優遇制度
マンションに関連する税金の知識と併せて、購入時に利用可能な優遇制度も覚えておきましょう。代表的な制度について詳しく解説します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで個人がマイホームを取得する際、一定の条件を満たすことで所得税や住民税の税額控除を受けられる制度です。
原則として、その年の年末時点におけるローン残高の1%相当額を、最大10年間控除できます。年間控除限度額は40万円です。
住宅ローン控除の主な利用条件として、控除を受ける年の所得金額が3,000万円以下であることや、ローン返済期間が10年以上であることなどが挙げられます。
所得税や住民税から控除額を直接差し引けるため、大きな節税効果を期待できる制度です。利用条件を満たすなら積極的に利用しましょう。
参考:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
不動産取得税、登録免許税の優遇
マンション購入時に課される建物の不動産取得税は、マンションが一定の条件を満たせば税額の軽減措置を受けることが可能です。床面積や耐震基準などの要件が定められています。
控除額は新築日により異なり、条件を満たす場合は固定資産税評価額から控除されます。建物が軽減措置の対象になれば、土地の不動産取得税も控除を受けられます。
登記手続きにかかる登録免許税も、優遇措置の適用を受けることが可能です。土地の所有権移転登記については、令和5年3月31日まで税率の軽減措置が適用されます。軽減措置適用中の税率は1.5%です。
建物の所有権や抵当権に関しても、令和4年3月31日まで税率が軽減されます。ただし、土地のケースと違い、対象となる住宅が一定の条件を満たさなければなりません。
参考:不動産取得税の軽減制度に係るQ&A(非課税・住宅の軽減制度等)|東京都主税局
6.税金も考慮して資金計画を立てよう
マンションの購入時や所有中は、さまざまな税金が課されます。購入時の主な税金は不動産取得税や登録免許税、所有中に発生する税金は固定資産税や都市計画税です。
マンションを売却する際にも、利益が出れば税金がかかります。各種税金について理解を深めた上で、無理のない資金計画を立てましょう。