1.考えておきたい独身者の老後の住まい
生きている限り家は必ず必要なものです。持ち家でも賃貸でも、ある程度のコストが必ずかかるからこそ、あらかじめメリット・デメリットを比較して、自分に合う住まいについて考えておくことが大切です。
持ち家のメリット・デメリット
住まいを購入すると、生涯住み続けられ、生活に安心感を得られる点がメリットです。自分の好みに合うようリフォームやDIYも自由にでき、ペットとの暮らしも気兼ねなく満喫できます。
住宅ローン完済後は、住居費をぐっと抑えやすくなる点もメリットです。その一方で頭金や諸費用など、購入時の費用負担が大きい点はデメリットといえます。
加えて火災保険料や固定資産税などの負担も増加するほか、修繕費用も全額自己負担です。転勤といった事情で住み続けられない場合には、売却したり賃貸に出したりしなければいけません。なかなか買い手や借り手が付かない事態も起こり得ます。
賃貸に住むメリット・デメリット
賃貸のメリットは手軽さです。初期費用は持ち家と比較して少額で済み、契約も簡単なので引っ越しやすいでしょう。高齢になり老人ホームや高齢者住宅へ住み替える場合も気軽です。
コンスタントにかかる費用は家賃のみのため、コストの管理をしやすいのもポイントといえます。また入居者の過失や不備がない場合、設備の修理やメンテナンスはオーナー負担になり、故障に備える必要がありません。
ただし家賃を払い続けていても、資産にならない点はデメリットです。自由にリフォームができないため、高齢になると住みにくい可能性もあります。住み続ける限り家賃を払い続けなければいけない点も負担です。
2.独身の老後は持ち家が有利
独身のまま老後を過ごすなら、持ち家を保有した方が暮らしやすいかもしれません。高齢だと賃貸物件の『入居審査』に通過しないケースもあります。資産としての側面や、住宅ローン契約時に加入する団信の保障も、持ち家が有利と考えられる理由です。
部屋を借りるハードルが上がる
現役で働いている間は安定収入があるため、支払い面の不安はあまりありません。しかし定年退職を迎え年金収入がメインになると、支払いの不安から賃貸物件を借りられない可能性があります。
さらに独身であれば、近くに連帯保証人を頼める人がいないケースもあるでしょう。孤独死のリスクを重視するオーナーもいます。住み替えたいと思っても、審査に通過せず希望の物件に入居できないかもしれません。
持ち家であれば支払いや連帯保証人は不要です。定年退職までに住宅ローンを完済していれば、住居費を抑えられるため老後の生活費も安定しやすいでしょう。
資産として残る
資産として残るのも持ち家のよい点です。購入時に資産価値の高い物件を選べば、資産形成にも役立ちます。例えば再開発が予定されている地域のマンションを購入すれば、値上がりにより資産価値が高まるかもしれません。
資産価値の高いマンションであれば、結婚や転勤といった理由で住み替えるときに、賃貸経営を始められる可能性があります。資産価値が高まった時点で売却し、利益を得るのもよいでしょう。
自宅の売買差益は、3,000万円まで無税になる制度を2年おきに使えます。上手に活用すれば、資産を大きく増やすことも可能です。
団信が生命保険代わりになる
住宅ローンを契約して持ち家を購入するときには、一般的に『団体信用生命保険(団信)』へ加入します。返済期間中に死亡や高度障害の状態に陥ると、住宅ローンの残債が保険金で支払われるものです。
団信のバリエーションは増えており、金利に上乗せすることで、より充実した保障を付けられます。三大疾病特約付きのものや八大疾病特約付きのものが代表的です。
いずれも所定の状態になった場合に住宅ローンが完済される内容です。充実した内容の団信と同程度の生命保険に加入する場合、金利上乗せ分の保険料では加入できません。生命保険代わりに利用できる点も、持ち家が有利なポイントといえます。
3.自宅購入のリミットは?
自宅を購入しようと考えているなら、早いほどよいでしょう。住宅ローンを利用する場合には、金融機関ごとに年齢制限が設けられている点も要注意です。
購入するなら早いほどメリット大
マイホームで暮らしたいなら、できるだけ早いタイミングの購入がよいでしょう。マイホームは長く住むほどコストが低くなるからです。同じ3,000万円のマンションでも、35年ローンと20年ローンでは月々の負担が異なります。
35年ローンでコツコツ返済する方が負担は軽くなり、支払いやすいはずです。早くから資産形成できるのもメリットといえます。賃貸の家賃と異なり、ローン返済は資産になるため無駄がありません。
住宅ローンを使う場合は要注意
住宅ローンを契約して自宅を購入するなら、金融機関ごとに定められている『申込可能年齢』と『完済年齢』に気を付けましょう。住宅ローンは何歳でも借りられるわけではありません。
例えば『満20歳以上71歳未満』というように、申し込める年齢が決められています。加えて完済年齢も『81歳未満』や『85歳未満』などと決まっています。
完済年齢が81歳未満と定められている金融機関の場合、46歳を超えると35年ローンは契約できません。申込可能年齢なら申し込めますが、希望の年数では契約できない可能性があります。
4.老後に備え自宅を購入する際の注意点
老後に有利な持ち家ですが、購入時には注意点があります。高額の『初期費用』や『完済計画』、購入後の『ランニングコスト』などです。注意点をあらかじめ知った上で購入すると安心でしょう。
まとまった初期費用が必要
自宅の購入時には『頭金』と『諸費用』が必要です。頭金は物件価格の一部のうち、先に支払う部分のことをいいます。物件価格の10~20%ほど支払うのが一般的です。
諸費用は手付金や事務手数料・登記費用などを指します。新築物件と中古物件で割合は異なりますが、3~10%が目安といわれる費用です。
3,000万円のマンションを購入する場合、頭金10%・諸費用7%なら、合計で510万円かかります。
頭金0円での購入や諸費用ローンの利用も可能ですが、全てをローンにすると返済期間が長くなり過ぎるでしょう。ある程度の初期費用を支払える資金が必要です。
完済までの計画を立てる
あらかじめ完済までの計画を立てておくと、無理なく自宅を購入しやすいはずです。総支払額を減らしたいからといって、借入期間を極端に短く設定すると、毎月の返済が厳しくなってしまいます。
希望する金額を借りられない可能性もあるでしょう。また、返済に退職金を利用すれば余裕があると考えている人もいるかもしれません。
しかし退職金は老後の生活費にもなる資金です。退職金の使い道はよく考えて決定しましょう。
ランニングコストも計算に入れる
自宅の購入後に必要なコストは、住宅ローンの返済だけではありません。固定資産税や都市計画税などの税金のほか、マンションであれば管理費や修繕積立金が必要です。
修繕積立金の目安は1平米あたり200円ほどが目安です。40平米のマンションであれば、月8,000円かかります。住宅ローンの返済額だけでなく、税金や修繕積立金などを考慮したコストを考えておきましょう。
5.老後の住まいは早めの検討が必要
老後の住まいについては、できるだけ早い時期に検討するのがおすすめです。持ち家は生涯住み続けられ資産になる一方で、購入時にまとまった資金が必要です。税金や火災保険などの負担も増えます。
賃貸は気軽に住み替えできるのが魅力ですが、高齢になったときに契約しにくくなるかもしれません。老後も安心して住み続けられる住まいを確保するなら、早めに自宅を購入するのが有利です。
ただし完済までの計画はじっくり立てましょう。ランニングコストも把握した上で計算すれば、順調に完済を目指せるはずです。
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返済額がはっきりすれば、毎月の予算を立てやすいはずです。定年退職までの資金繰りはどのようになりそうか、退職後も問題なく返済できそうかなど、疑問や不安に感じている部分もクリアにできます。
具体的な数字が分かることで、老後の住まいについて検討しやすくなるでしょう。