1. 住宅ローン契約時に火災保険が必要な理由
住宅が火災により損害を受けると、担保価値が下がり、ローンを返済できなくなる恐れがあります。火災により返済が滞るリスクを避けるために、多くの金融機関は融資の条件に火災保険への加入を設定しています。
火災保険の役割
損害保険の一種である火災保険とは、火災や自然災害を含むさまざまな災害により、建物や家財が受けた損害を補償する保険です。
『建物』とは建物本体や塀・車庫・物置きを指し、『家財』には家具・家電製品・衣類などが該当します。保険の対象としてどちらか一方を選べるほか、両方を選ぶことも可能です。
住宅には、さまざまな理由により火災が発生するリスクがあります。火災で住宅や家具類が損害を受けた場合、大きな経済的ダメージを負いかねません。
火災保険に加入していれば、火災などによる経済的な負担を軽減できます。ローンを組む際だけでなく、住宅を一括で購入する場合も、必ず加入するべき保険です。
住宅には担保としての役割が
住宅ローンを組むと、金融機関はローンの対象となる住宅を担保に入れます。返済が滞った場合に建物を売却し、その代金を未返済分に充当するためです。
しかし、住宅が火災でダメージを受けると、建物としての価値が下がってしまいます。十分な金額で売却できなければ、ローン契約者が負債を背負うことにもなりかねません。
住宅が消失した場合は、担保自体がなくなります。ローン契約者に貯蓄がなければ、金融機関は未返済分を補てんする術を失うことになるのです。
火災で住宅がなくなっても、融資を受けた金額はきちんと返済しなければなりません。契約者と金融機関の双方にとって、建物を担保に入れることには重要な意味があります。
火災保険加入が融資の条件に
火災などで建物の担保価値が下がるリスクを避けるために、多くの金融機関では融資の条件として火災保険への加入を定めています。保険契約は、ローンの返済が完了するまで継続させる必要があります。
例えば住宅金融支援機構から融資を受けている場合、住宅金融支援機構が定めた火災保険または特約火災保険のうち、いずれかを契約しなければなりません。
金融機関によっては、保険金請求権に『質権』を設定するケースもあります。この場合は、保険契約者ではなく金融機関が保険金を直接受け取ることになります。
2. 火災保険は財産を守るために必要
火災保険に加入していれば、もらい火による被害もカバーできます。火災以外のリスクヘの備えにつながる点もポイントです。
自宅は自分で守る必要がある
近隣で火災が発生した場合、類焼により自宅が損害を受けることもあります。自宅が出火元でなくても、ほとんどのケースでは修復費用を自分で準備しなければなりません。
建物の火災に関しては、『失火責任法』と呼ばれる法律が定められています。重過失である場合を除き、火災で他人に損害を与えても賠償責任を負わないとする内容です。
民事や示談で賠償責任を負ってもらえる可能性もありますが、相手が火災により大きな損害を受けていれば、隣家への賠償金まで払えないと考えるのが妥当です。
最終的には、自宅は自分で守らなければなりません。思わぬ出来事で費用負担が発生するリスクに備えるためにも、住宅ローンの契約時には火災保険への加入が必須です。
火災以外のリスクへの備えにも
火災保険の補償範囲は、失火やもらい火だけではありません。自然災害をはじめ、さまざまな原因による被害をカバーしているため、火災以外のリスクヘッジにもつながります。
近年は自然災害が増加傾向にあり、住宅が損害を受ける可能性が高まっています。火災保険では、台風や水害をはじめ、落雷・強風・豪雪などによる損害も補償しているのが一般的です。
マンションでは、排水設備の故障や消火活動の放水により、水ぬれ被害に遭うこともあります。自宅の水ぬれだけでなく、水漏れで階下に被害を与えた場合も、火災保険で対応可能です。
『破裂や爆発』『盗難』『集団行為による破壊や暴力』『建物外部からの物体の落下や飛来』による被害に対しても、火災保険で補償してもらえます。
3. 金融機関おすすめの火災保険に加入すべき?
ローン契約時に金融機関が紹介する火災保険以外でも、よさそうな保険があれば自由に選べます。ただし、おすすめの保険を選ぶことで得られるメリットもあります。
入る保険は自由に選べる
住宅ローンの融資を受ける際、金融機関から火災保険を案内されることがあります。融資への影響を心配し、紹介された保険を選びがちですが、すすめられた保険に入る必要はありません。
いくつかの保険を比較し、ほかによさそうな保険があれば、案内された保険ではなくても自由に選べます。融資結果に影響を与えることもありません。
金融機関が住宅ローン契約と一緒に保険への加入を強要することは、いわゆる『抱き合わせ販売』に該当するため禁止されています。
ただし、保険契約の内容に条件が定められている場合は、原則として従う必要があります。『返済終了まで契約を継続すること』『最低でも建物の評価額の補償があること』などがよくある例です。
さまざまなメリットがある場合も
金融機関がおすすめする火災保険を選ぶことで、メリットを受けられる場合もあります。保険を選ぶ際は、さまざまな角度からメリットを比較することが重要です。
例えば、金融機関が紹介する火災保険は、団体割引が適用されて保険料が安くなるケースもあります。似た補償内容の保険と比較して悩む場合は、保険料の安い方がお得です。
金融機関のおすすめを選ぶことで、ほかの火災保険を選ぶ手間が省略できることもメリットです。ローン契約と同時に加入手続きを進められる場合も多いため、個人で申し込む保険会社にわざわざ足を運ぶ必要もありません。
4. 火災保険の選び方
火災保険を選ぶ際は、保険対象や補償額を決める必要があります。地震保険や特約を検討することも重要です。
保険対象を決める
火災保険の保険対象は、建物と家財の二つです。建物は、建物本体や付属する門・塀・車庫などが該当します。マンションの場合、共用部分は含まないのが一般的です。家財は、家具・家電・衣服などの動産を指し、戸建てでもマンションでも同様です。
保険対象の選び方は、『建物のみ』『家財のみ』『建物と家財の両方』の3パターンがあります。両方を選べば補償は手厚くなりますが、保険料は高くなります。
建物の燃えやすさを判断する『構造級別』を確認しておくのも重要です。3段階に分かれており、燃えやすい構造であるほど保険料は高くなります。分からない場合は、建物の仕様書や施工メーカーに確認する必要があります。
補償額を決める
建物の評価額の主な算出方法には、『時価』と『再調達価額』の2種類があります。火災保険の補償額を決める際は、再調達価額を基準にするのが一般的です。
再調達価額とは、火災などの損害が発生した場合に、同程度の状態にまで修復できる金額を指します。再調達価額をもとに、実際に補償してもらいたい『補償額』を自分で決めるという流れです。
補償額は再調達価額と同等の金額で契約するのがポイントです。多めに契約すると保険料が無駄になる可能性があり、少なければ費用が足りなくなる恐れがあります。
地震保険や付帯保険の内容を決める
火災保険に地震保険や特約を組み合わせることで、より広範囲のリスクをカバーできます。地震保険は単独で契約できないため、火災保険に付帯する形で契約しなければなりません。
地震保険では、地震・噴火・津波による損害を補償します。地震が多い地域に住んでいる場合は、火災保険とセットでの加入を検討するのがおすすめです。
火災保険に付帯できる特約には、偶然の事故による損害や、他人から預かった物品に与えた損害を補償できるものがあります。日常生活のさまざまなリスクに備えられるため、内容をしっかりと確認することが大事です。
5. 火災保険は必ず加入しよう
住宅ローンの融資を受ける際は、火災保険への加入が必須です。火災による経済的なリスクに備えられるほか、火災以外での損害に対する補償も受けられます。
火災保険を選ぶ際は、金融機関から紹介された保険以外からも自由に選べます。保険対象や補償額、地震保険などをきちんと検討し、無理なくリスクをカバーできる保険を選びましょう。
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