1. フラット35は繰り上げ返済可能
繰り上げ返済とは、月々の支払額とは別に、まとまった金額を返済する方法です。より効果を高められるコツや、2種類ある返済方法について解説します。
繰り上げ返済は早く行うほど効果的
住宅ローンの『繰り上げ返済』を行う場合は、少額でもなるべく早めに行うのが効果的です。元金を小まめに減らしていくことで、利息軽減効果がより高まります。
お金を貯めて一気に返済しようとしても、貯めている間も元金に利息がかかり続けるため、結果的に損をしかねません。繰り上げ返済で100万円返済するなら、100万円貯まるまで待つのではなく、10万円ずつ小まめに返す意識を持ちましょう。
金融機関やプランによっては、繰り上げ返済時に手数料を請求される場合があります。『フラット35』は繰り上げ返済手数料がかからないため、手数料を気にせず小まめに返済することが可能です。
返済の方法は2種類
繰り上げ返済には、『期間短縮型』と『返済額軽減型』の2種類の方法があります。どちらの方法でも、月々の返済額とは別にまとまった金額を前倒しで返済するため、金利負担を軽減できます。
期間短縮型で返済すると、月々の返済額は変わらずに、残りの返済期間を短縮することが可能です。一方、返済額軽減型では残りの返済期間を変えず、月々の返済額を減らせます。
2種類の返済方法には、それぞれに異なるメリットがあります。重視すべきポイントを考慮し、家計やライフプランに合った方法を選択することが重要です。
期間短縮型
ローンの返済期間を長めに設定すると、退職後にもローンが残ってしまうケースがあります。『退職金がもらえるか分からない』など、老後の生活に不安があるなら、ローンの返済を早めに済ませておくに越したことはありません。
期間短縮型の繰り上げ返済により、残りの返済期間を短縮できれば、老後の返済負担を軽減できます。繰り上げ返済を繰り返し、60~65歳までに完済するのが理想です。
期間短縮型には、総返済額をさらに減らせるメリットもあります。同じ金額で繰り上げ返済を行った場合、返済額軽減型より期間短縮型のほうが、利息軽減額は大きくなります。
将来にできるだけ多くの資金を確保したいと考えるなら、期間短縮型で返済するのがおすすめです。場合によっては、トータルの利息軽減額に100万円以上の差が出る場合もあります。
返済額軽減型
月々の返済額を減らせる返済額軽減型は、ライフスタイルが変わり家計のやり繰りが厳しくなってきた場合に有効です。子どもができて支出が増えたり、転職により収入が減ったりしても、月々の返済額が減れば家計を安定させられます。
金利上昇リスクに対応できる点も、返済額軽減型のメリットです。全期間固定金利のフラット35の場合には無関係ですが、『変動金利型』や『固定金利期間選択型』でローンを組んでいる場合、金利が上昇すると月々の返済額も増加します。
しかし、返済額軽減型で繰り上げ返済を行えば、金利上昇による月々の返済額の増加を抑えることが可能です。繰り上げ返済額やタイミングによっては、金利見直し前と同水準にまで下げられるでしょう。
2. フラット35の繰り上げ返済方法
フラット35を利用中に繰り上げ返済を行う場合は、金融機関窓口またはウェブサイトで手続きできます。それぞれの具体的な方法を確認しましょう。
金融機関窓口で手続き
フラット35の繰り上げ返済の手続きは、ローンを返済中の金融機関窓口で行えます。繰り上げ返済を希望する『口座振替日の1カ月前』までに、契約者本人が手続きしなければなりません。
返済予定金額などを相談した後、窓口で渡された申請書を指定日までに提出すれば、手続きは完了です。念書を渡された場合は、申請書とあわせて提出しましょう。
金融機関に出向く時間がない場合は、電話での申し込みも可能です。電話で申し込んだ後、送付されてくる申請書に署名・捺印し、指定された期限までに返送します。電話で連絡する場合も、申し込み期限は『口座振替日の1カ月前』です。
ウェブサイトで手続き
住宅金融支援機構のウェブサイト『住・My Note』を利用すれば、フラット35の繰り上げ返済をオンラインで手続きできます。
住・My Noteを利用するためには、『お客様ID』の発行が必要です。一度IDを取得しておけば、2回目のアクセス以降はログインするだけで直接手続きを行えます。
ウェブサイトから手続きする場合には、書類を提出する必要がありません。住宅ローンの借入金残高照会など、照会機能が充実している点もメリットです。
3. 繰り上げ返済する際の注意事項
フラット35での繰り上げ返済には、申し込み期限と最低返済金額が設定されています。全額繰り上げ返済は金融機関でしか行えないことも覚えておきましょう。
事前申し込みが必要で最低返済金額がある
金融機関窓口でフラット35の繰り上げ返済手続きを行う場合は、繰り上げて返済する『1カ月前』までに申し込む必要があります。
住・My Noteによる手続きでは、繰り上げ返済をする『前月の返済日の前営業日』が申し込み期限です。取り下げ期限は、繰り上げ返済月の『引き落とし日の6営業日前』とされています。
『最低返済金額』が設定されている点にも注意しましょう。金融機関窓口で手続きを行う場合の最低返済金額は『100万円』、住・My Noteの場合は『10万円』です。
住・My Noteを利用した繰り上げ返済は、2カ月連続での申し込みはできません。間隔を詰めて返済したいケースでも、最短で1カ月おきに申し込む必要があります。
全額繰り上げ返済対応は金融機関のみ
フラット35では、一部繰り上げ返済だけでなく、『全額繰り上げ返済』を行うことも可能です。ただし、住・My Noteでは全額繰り上げ返済の手続きは行えません。金融機関窓口または電話で申し込む必要があります。
全額繰り上げ返済を希望する場合も、一部繰り上げ返済と同様、繰り上げて返済する『1カ月前』までに申し込まなければなりません。期限を過ぎてしまうと、口座振替日に通常の返済が実行されてしまいます。
繰り上げ返済が行われる日は、一部と全部のどちらの場合でも、通常の返済日として設定している『口座振替日』です。希望日を指定しての返済はできない点に注意しましょう。
4. 住宅ローン控除を受けている場合の注意事項
住宅ローン控除の適用中に繰り上げ返済を行う場合は、返済期間と年末残高に注意が必要です。それぞれに関して気を付けるべきポイントを紹介します。
繰り上げ返済により対象外になる場合も
住宅ローン控除の適用条件の一つに、返済期間が『10年以上』という条件があります。返済期間を10年未満に設定したローン契約では、住宅ローン控除の適用を受けられません。
期間短縮型の繰り上げ返済を行う場合、引き続き住宅ローン控除の適用を受けたいなら、借入日から返済完了日までの期間を10年以上残す必要があります。
例えば、ローン返済を8年間続けている場合は、繰り上げ返済後の返済期間を2年以上残せば、引き続き控除を受けることが可能です。
年末残高によって控除額が変動
住宅ローン控除の毎年の控除額は、原則としてその年の年末におけるローン残高の1%です。ローン残高が多いほど控除額も多くなります。
その年の12月より翌年の1月に繰り上げ返済を行ったほうが、その年の年末残高を多く残せるため、控除額もより多くできます。住宅ローン控除を受けている場合は、繰り上げ返済の時期も意識しましょう。
低金利でローンを利用しているケースでは、毎年小まめに繰り上げ返済するより、『11年目』にまとめて返済するほうが効果が高い可能性があります。
5. 計画的に繰り上げ返済を利用しよう
フラット35では繰り上げ返済を行うことが可能です。金融機関窓口や電話以外に、ウェブサイトでも手続きできます。
繰り上げ返済は早く行うほど効果を高められます。期間短縮型と返済額軽減型の2種類があることを理解し、家計やライフプランに合わせて計画的に利用しましょう。
フラット35ってどんな住宅ローン?
特徴やメリット・デメリットを解説
| フラット35とは?
住宅金融支援機構と全国300以上の金融機関が提携して扱う「全期間固定金利型住宅ローン」です。
住宅ローンの利用者が返済できなくなったときに住宅金融支援機構から金融機関に保険金を支払うタイプのフラット35である「保証型」、住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が金融機関から買い取るタイプのフラット35である「買取型」と大きく2つに分かれています。
| フラット35の審査の特徴
フラット35は住宅金融支援機構が提供元となっている公的な色合いのある住宅ローンで、さまざまな人が利用しやすいよう設計されています。
年収や雇用形態といった申込人の属性に対する審査は柔軟で、例えばパート・アルバイトや派遣社員といった非正規雇用の方や、業歴の浅い自営業者や法人役員、また転職直後で勤続が浅い方でも利用しやすくなっています。また、団信の加入が必須ではないため、健康上の理由で団信審査に落ち民間金融機関の住宅ローンを組めなかった方も利用しやすいでしょう。
一方で、購入する物件そのものに対する評価は民間金融機関よりも厳しい傾向があります。例えば建築物が適法であることを証明する「検査済証」が交付された物件でないとフラット35は利用できません。その他にも接道義務や住宅の規格、耐久性、耐震性などの基準が設定されています。
<フラット35の主な特徴>
- 返済額が変わらない!
- 全期間固定金利なので、毎月の返済額が急に変わることはありません。返済計画や生活設計をしやすくなっています。
- 繰り上げ返済手数料が無料
- 余計な費用をかけずに繰り上げ返済を進めることが可能です。
- 本人の属性に対する審査が柔軟
- 明確な条件が公表されているので、さまざまな人が利用しやすい設計となっています。非正規雇用の方や
- 団体信用生命保険への加入が任意
- 健康上の理由で民間金融機関のローンを組めなかった人は、団信に加入しない選択肢をとることができます。
- 物件に対する基準に注意
- 物件の性能評価が民間金融機関よりも厳しい傾向にあります。
- 金利水準は高め
- 全期間固定金利なので金利水準が高めです。民間金融機関の変動金利に比べると、返済総額が高くつくリスクがあります。
| 保証型が向いている人は?
フラット35の保証型は、住宅購入時に自己資金を1割以上入れる方に向いており、より低金利で35年固定金利を使うことできたり、「買取型」にはない充実した団信保障を利用することができます。
例えばフラット35で14年連続シェアNo.1(※)のARUHIは自己資金の割合に応じて多種多様な金利プランを用意しています。
※2010年度-2023年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2024年3月末現在、SBIアルヒ調べ)
| 買取型が向いている人は?
フラット35の買取型は、自己資金を抑えてなるべくフルローンを組みたいという方に向いています。
| フラット35のポイント制とは?
取得する住宅の設備・エリア等に応じて金利を引き下げる制度で、2022年10月に開始されました。
太陽光発電・省エネといった住宅性能や管理・修繕、エリアに応じて1~4ポイントが付与され、最大で10年間・0.5%の金利引き下げを受けることができます。詳細は各社公式サイトにてご確認ください。