1. 固定資産税の基礎を知ろう
具体的な固定資産税額について見ていく前に、まずは固定資産税がどのような税金なのかを解説します。基礎知識をチェックすることで、理解を深められるでしょう。
所有する土地と建物に課せられる税金
土地や建物といった不動産に課税される税金が『固定資産税』です。戸建てはもちろんマンションを所有した場合にも課されます。不動産を所有し続けている限り、支払い続けなければいけません。
毎年1月1日時点で『固定資産税課税台帳』に登録されている所有者に、支払い義務が生じます。課税しているのは不動産のある市町村です。東京23区は特例で都が課税しています。
固定資産税の税率や計算方法は
固定資産税は『課税標準額×税率』で計算します。計算式に用いる課税標準額とは、市町村の固定資産課税台帳に記載されている『固定資産税評価額』です。
ただし必ずしも課税標準額と固定資産税評価額が一致するわけではありません。例えば特例措置が適用される住宅用地では、一致しないケースもあります。
また税率は基本的に『1.4%』です。ただし自治体が課税する税金のため、1.5%や1.6%と税率が異なる自治体もあるでしょう。
条件付きで減税措置もある
1.4%の税率で課税される固定資産税ですが、条件を満たすと『減税措置』を受けられるケースもあります。例えば土地や建物が基準を満たすと減税につながるのです。
またバリアフリーや省エネ対策などの実施により、建物の固定資産税が1年間1/3減税される制度もあります。事前に申請が必要な場合もあるため、購入した物件に適用される制度をチェックし、効果的に利用しましょう。
2. マンションの固定資産税で注意する点は
マンションの購入を検討しているなら、固定資産税にも注意が必要です。毎年かかる費用のため、固定資産税の仕組みや減税措置をよく理解した上で決定しましょう。
基本的に新築は固定資産税が安い
同条件の新築と中古のマンションであれば、新築の方が固定資産税は安い傾向があります。なぜなら新築物件は下記の要件を満たせば、固定資産税の減額が適用されるからです。
- 床面積(案分した床面積を含む)が50~280平米
- 店舗併用住宅は居住用部分の床面積が1/2以上
- 2022年3月31日までに建築されていること
これらを満たしていれば、床面積120平米以下の部分は、固定資産税が当初3年間は1/2に減税されます。さらにマンションが3階建て以上で耐火・準耐火建築物であれば、当初5年間が減税期間です。
加えて『認定長期優良住宅』なら7年間もの間、固定資産税が減税され続けます。ただし減税は期間限定のため、永続的に減税されるわけではありません。
参考:
土地の大きさが減税の基準になる
土地の大きさも減税につながります。住宅のために使われる土地は、固定資産税の計算に用いられる課税標準が減額されるからです。200平米までは1/6、200平米を超える部分は1/3で計算されます。
マンションの土地の大きさは『敷地面積÷戸数』で計算します。敷地面積2,000平米50戸のマンションであれば、土地の大きさは40平米です。200平米以下のため課税標準は1/6に、それに伴い固定資産税も1/6になります。
床面積による減税と違うのは、建物が建っている限り減税が続く点です。
高層階の方が税額は高い
2017年度に実施された税制改正により、20階以上で高さ60mを超えるマンションでは、高層階ほど固定資産税が高くなるよう変更されました。具体的には真ん中にあたる階を境に、1階上がると約0.25%税額が上がるのです。
反対に1階下がると税額は約0.25%下がるため、同じマンションでも下層階ほど固定資産税の負担を減らせます。例えばマンション全体で固定資産税が50,000,000円かかる25階建てマンションがあるとします。
各階に同じ広さの部屋が10戸ずつある場合、税制改正前はどの部屋でも固定資産税が200,000円でした。しかし改正後は25階と1階で10,000円以上の差が出ているのです。
参考:平成29年度改正タワーマンションに係る固定資産税の取扱い|公益社団法人全日本不動産協会
3. マンションの固定資産税をシミュレーション
具体的にマンションの固定資産税はいくらになるのか、シミュレーションしてみましょう。新築・中古共に、専有面積70平米・新築時の建物の固定資産税評価額12,000,000円・土地の固定資産税評価額30,000,000円という条件で比較します。
新築の場合
新築マンションを購入するときに使える軽減措置は、下記の2種類あります。
- 新築時から5年間は固定資産税が1/2になる制度(建物に適用)
- 200平米以下の住宅用地は課税標準が1/6になる制度(土地に適用)
これらの軽減措置を適用し、土地と建物の固定資産税額を求めると下記の通り計算できます。
- 建物税額:12,000,000円×1.4%×1/2=84,000円
- 土地税額:30,000,000円×1.4%×1/6=70,000円
計算した土地と建物の税額を足すと、新築マンションの固定資産税を求められます。このケースでは70,000円+84,000円=154,000円です。
中古の場合
中古マンションに利用できる固定資産税の軽減措置は、土地に適用される課税標準が1/6になる制度のみです。建物が建っている限り固定資産税が減額されるため、中古マンションにも使えます。
また建物の固定資産税に軽減制度はありません。ただし築年数の経過とともに評価額が低下し税額も抑えられます。東京都の経年減価補正率表では、築6年の中古マンションには0.8335をかけ計算する決まりです。
- 土地税額:30,000,000円×1.4%×1/6=70,000円
- 建物税額:12,000,000円×0.8335×1.4%=140,028円
上記に基づき計算すると、築6年の中古マンションの固定資産税は70,000円+140,028円=210,028円と分かります。
4. 固定資産税の支払い方法について
毎年課税される固定資産税は、指定された方法で支払います。具体的にどのような支払い方法があるのでしょうか?お得な支払い方も含めチェックしましょう。
基本的には年4回の分割払い
固定資産税の支払いは第1~4期に分けて分割払いする方法が一般的です。自宅に納付書が郵送されるため、記載されている内容を確認し納付期限までに支払います。
自治体によっては一括払いができるケースもありますが、総支払額の割引はありません。また1回の支払額を抑えるため12回払いにしたい人もいるかもしれませんが、基本的には不可能です。
納付書をコンビニや郵便局・市区町村税事務所へ持参し現金で支払うほか、口座振替による支払いも設定できます。
クレジットカードや電子マネー支払いで得に
数十万円といった高額な支払いになるケースも多い固定資産税は、ポイントが貯まるクレジットカードで支払うとお得です。ただし利用には支払額に応じて手数料がかかります。
付与されるポイントと比較し手数料が上回るようであれば、トータルではマイナスです。事前に計算し、付与されるポイントの方が多いか確認しておくとよいでしょう。
ポイント還元を受けられる以外にも、オンラインで24時間納付できる点や、分割払いができる点もメリットといえます。加えて電子マネーを利用した支払いでも、ポイント還元が可能です。
クレジットカードによるチャージでポイントが貯まる電子マネーなら、手数料0円でポイントが付与されます。
5. 固定資産税の減税を確実に受けるために
複数の減税制度がある固定資産税ですが、何もしないでいると減税を受けられない可能性があります。確実に減税を受けるためのポイントをチェックし、漏れなく手続きすることが大切です。
自分から申請しないと適用されない
固定資産税の減税制度は申請が必要です。購入したマンションが対象となる物件でも、自動的に減税されない点に注意しましょう。どの制度を利用できるか自分で調べ、手続きをしなければいけません。
例えば新築物件に適用される軽減措置を利用するなら、初年度に申請書の提出が必要です。住宅用地の申請は、購入した翌年の1月31日までに市区町村の担当部署へ『固定資産税の住宅用地等申告書』を提出します。
またリフォームによる減税措置を受けるには、工事完了後3カ月以内に申請しなければいけないため、期限に注意しましょう。マンション購入後は早めに手続きをすると、期限前に慌てずに済みます。
計算間違いをされている可能性もある
納付書が届いたら内容を必ず確認しましょう。固定資産税は自治体の担当部署に所属する職員が計算しています。そのため計算間違いといったミスが起こる可能性もゼロではありません。
ときには軽減制度を申請したはずが適用されていない、という事態も起こり得ます。もし誤った納付書で納税してしまったなら、自治体へその旨を申し出ましょう。還付の請求で、払い過ぎた固定資産税が戻ってきます。
不安な場合は税理士に相談を
自分だけでは固定資産税の金額について判断ができない場合には、税理士に計算を依頼するとよいでしょう。納付書に記載された金額が妥当なものかチェックしてもらえます。
また減税制度を利用できるかどうかも相談可能です。税理士に計算し直してもうことで、還付金を受け取れる可能性もあるでしょう。
税理士事務所によっては、無料で固定資産税の診断を実施しているところもあります。還付が発生したときに成果報酬として代金を支払うため、気軽に利用しやすい仕組みです。
6. マンションの固定資産税を正しく理解しよう
マンションを購入するなら、価格だけでなく固定資産税もよく比較しましょう。不動産を取得すると毎年発生する税金は、軽減措置の利用で納税額を抑えられます。
例えば新築限定で3~7年間の固定資産税を安く抑えられる制度や、土地の大きさによって税額が軽減される措置も利用可能です。ただし自動的に適用されるわけではないため、自分で申請しなければいけません。
不安な点があるなら税理士に相談してもよいでしょう。固定資産税の基礎知識と合わせ、軽減措置について知ることで、税金の支払額を抑えられます。